テレビCMとは〜視聴率とルールの話

視聴率と聞いて一番馴染みがあるのは「世帯視聴率」だと思います。ネットニュースなどで「昨夜の◯◯ドラマの視聴率は**%!」などとよく見ますね。しかし、テレビCMの世界ではこの世帯視聴率ではなく「個人視聴率」が徐々にその中心になってきています。また、録画して観られた「タイムシフト視聴率」も最近はよく耳にします。我々コンサルタントにとっても、参考にするテレビ視聴率の選択肢がいくつか増えてきています。専門的には「CM視聴率」や「視聴質」というような指標も出てきました。

しかし、この視聴率で使われる数字や、もっと遡ると「テレビCM」に関わるいろいろな言葉などは、ちゃんと理解されないまま使われていることも意外と少なくないようです。今回は過去に、私がとある説明会で使用した資料を引っ張り出しながら、少しまとめてみます。

説明会がいつの季節だったのかは覚えていないのですが、参加いただいた方は宣伝部だけでなく、営業や管理、製造部門の方もいらっしゃったと記憶しています。「テレビCMとは」を簡単にポンチ絵付きで解説します。


テレビCM(テレビ広告)の変なルール

いきなり「変なルール」というのは関係者には大変失礼な気もしましたが、自分自身も含めテレビCMに関わってきた人には当たり前のこと(話)なんだけども、普通は知らないことでしょう、興味もないでしょう、という意味合いです。これまでテレビCMに関わってきていない方々になるべくわかりやすいように、そう書きました。

世帯視聴率と個人視聴率

馴染みがあるのは世帯視聴率。視聴率調査自体の歴史は非常に長いのですが、現代版の視聴率測定の開始は1997年からです。「ピープルメーター(PM)」という専用の機械でランダムサンプリングされた調査世帯からデータが収集されます。ピープルメーターですから個人に紐づいた測定が行われている訳ですが、視聴率の評価では個人でなく世帯が長らく使われてきました。それが近年では「世帯から個人へ」変わりつつあります。

この視聴率はテレビCMの世界では「GRP」という特殊な3文字略語で表されます。「1,500GRPのテレビCMを出すと1,500万世帯に広告が流れるの?」「世帯から個人に指標が変わるというのはメートルがヤードに変わったという感じ?」とご質問を受けたこともありますが、どちらも正しくありません。GRP自体は絶対数を示す単位を持っていませんし、世帯から個人への指標変化は二次元間の変化というよりも、二次元から三次元への変化と考える方が近しいです。言うなら、「メートルからリットルに」単位が変わる程の大きな変化です。

視聴率「1%」の番組にCMを「1本」流すと「1GRP」

でも、このGRPがそもそもわかりにくい。GRPは「グロス・レイティング・ポイント」の略号です(覚える必要はありません)。日常生活では触れない単位ですねw。でも、意外と覚えると簡単。視聴率が「1%」の番組にテレビCMを「1本」流すと「1GRP」と数えます。視聴率が10%番組にCMを100本流すと1,000GRPですし、1%の番組であれば1,000本流せば1,000GRP(でも、1,000本のCMは大変そう…)と、理屈上は同じ量になります。

厄介なのはGRPが%であることです。つまり、GRPは実数を持ちません。視聴率1%(1GRP)は関東では20万世帯ですし、関西では約10万世帯となります。これは個人視聴率でも同じこと。したがって、放送エリアの異なる視聴率を足しあげることはできません。関東で100GRP、関西で150GRPのテレビCMを流しても「合計250GRP」にはならないということです。


テレビCMのフリークエンシー

この辺りから、話が少しややこしくなってきます。でも、広告業界以外の方にもわかりやすくなるように、できるだけ書きます。

テレビCMは1回だけターゲットに当たってもあまり効果がないという考え方があります。もちろん、耐久消費財など、何度も何度もテレビCMを見ることで、必要となった時に選択肢のひとつに加えてもらえることは十分に考えられます。では、フリークエンシー(略語でFQと表記)とは何でしょうか?

FQはテレビCMが当たった頻度です。「回」で表します。そして、一定数以上のFQがある場合を「n+」と表記します。(例:FQ5回以上の場合は「FQ5+」)世帯でも個人でも構わないのですが、1世帯(1個人)に対してテレビCMが1回当たった場合はFQ1回となります。同様に2回ならFQ2回。全くテレビCMが当たらなかった場合はFQ0回(未到達)となります。

*ややこしければ、CM1回の代わりに「リンゴを1個あげる」でも同じです。


フリークエンシーの続き

ここまでGRPとFQという二つの言葉が出てきましたが、これらを使った説明をします。4人(4世帯でも同じ)にテレビCMが4回流れると100GRPになります。合計8回流れたなら単純に倍の200GRPです。

*4人なので、リンゴが合計4個で100%、合計8個なら200%となります。

でも、実際にはテレビCMはみんなに均等に当たる訳ではありません。たくさんそのCMを見る人もいれば、全然当たらない人もいます。そうGRPは「述べ視聴率」なので、どれくらいの人(世帯)に当たったかを把握する必要があります。

仮に200GRPの場合。ひとり目にはFQ4回(テレビCMが4回)、ふたり目には3回、3人目は1回のみ、4人目は未到達だったとします。テレビCMが見られた回数は合計8回で変わりません。4人のうち3人しかテレビCMが到達(リーチ)していませんので到達率は「75%」(4分の3)になります。また8回のテレビCMが3人だけに当たっていますので平均FQは約2.7回となります。実際に「2.7回CMを見た」という人はいないはずなのに不思議な指標ですが…。

*ここで重要なのは、平均FQの計算に「未到達者は含まない」ということ。CMが当たった人だけの平均です。

そして検算すると、リーチ75%×平均FQ約2.7回=200GRPに戻ります。


テレビの世界は時間軸が違う

テレビ(CM)の世界では時計(時間軸)が特殊です。もちろん1日は24時間ですが開始は朝5時。夜は翌朝の4時59分までが1日となります。なので、26時とか28時などという普段は聞かない時間帯が出てきます。でも、まあ、日常生活で考えると夜中の0時を過ぎても「翌日」とは思ってないので、その方が実態には近いのかも知れませんね。

*テレビCMを打った際の効果として自社サイトなどへのアクセスを評価する場合、日単位でレポートを見ているとこの時間軸のズレが分析を惑わすこともあります。その昔は某大手ポータルサイトも0時換算ではなかった記憶がありますが、この数時間のズレが重要な時もありますので注意してください。


テレビCMの長さ(尺)

テレビCMの長さにはルールがあります。歴史的にはもっといろいろあるようですが、現在は「15秒」および、その15秒の倍数です。つまり多くは30秒、60秒、90秒。時には120秒なんていうのもあります。普段テレビを観ているとそれぞれがランダムに流れてきます。15秒より30秒の方が倍以上の価値があるか?、より深くメッセージを伝えるられるのか?の議論はおいておいて、テレビCMの費用対効果を計るために「15秒換算(する)」という指標を使います。

15秒CMと30秒CMでは長さが倍違う訳ですから、30秒CMの方が料金も倍高いです。それを「全て15秒CMだったとしたら」と計算する方法です。30秒CMを100GRPだけ流した場合でも「200GRP」と計算します。ただし、リーチやFQは変わりません。


テレビCMの買い方は2種類

少々長くなってきました。これを今回のブログの最後にします。テレビCMの買い方には2種類あります。基本的なバイイング方法です。ひとつは「タイム」(番組提供)、そしてもうひとつは「スポット」(%買い)です。それぞれ特長や購入できる条件が異なります。

タイムは基本的に指名買いです。お肉屋さんでの買い物に例えるなら「私はロースが欲しいよ」「フィレだけちょうだい」と指定する買い方です。買うお店(テレビ局)によって、同じロースであっても当然値段も違います。片やスポットは量り売り。いろんな部位を混じえながらもグラム(単価)での購入が可能です。部位の混じり方や質によってグラム単価は異なります。タイムは個別単価ですが、最低半年間は「毎週」買い続けるという条件があります。スポットは随時適量だけ買えます。どちらがお好みかは、お肉を買いに来たお客さん(広告主)によって異なるでしょう。

*でも最近、この2つの買い方に加えて「SAS」という第3の選択肢も出てきました。ご興味ある場合はこちらをご覧ください。
>第三のテレビCM「スマート・アド・セールス(SAS)」とは

 

テレビCMバイイング分析の説明会でお話した、冒頭でのアイスブレイクをご紹介しました。今回のブログはここまでと致します。


長く続くコロナ禍の中で、これまで作った自分の資料をアーカイブだけに留めておかず公開しておこう思いました。どなたかの役に立つのか、誰の役にも立たないのかはわかりませんが、機会があれば、また続きもまとめてみたいなと思います。

 

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楳田 良輝|Yoshiteru Umeda