It always seems impossible until it’s done.
エリアアロケーション を考えてみる。

エリアアロケーション を考えてみる。

最適なアロケーション比率は?

エリアアロケーション

最近多くなってきたご相談が「テレビ × デジタルの最適アロケーション比率は?」です。しかし、プログラマティカでは、テレビCMとデジタル広告の最適なアロケーション比率を最初に求めるのではなく、まずはブランドやキャンペーン毎に各エリアに対する広告予算のアロケーションが行われた上でさらにテレビCMとデジタル広告の予算比率の最適化を行うべきという考え方を持っています。

全国均一にテレビ×デジタルの広告予算のアロケーションを行うことは少々乱暴であるとアドバイスをさせていただいています。今回は、その「 エリアアロケーション 」をテーマにまとめてみたいと思います。

 

エリア別の投下量と%コストの見直し

エリアアロケーション を行うにあたっては、まずテレビCMのエリア別投下量と金額の見直しを行います。通常、TVスポットCMに必要な金額は、投下エリアの世帯数(東阪名では人口数)1%に対する購入単価(%コスト)と購入量(GRP)で決まります。%コストはエリア毎に異なります。この単価をあらためて見直すことが必要です。これは単純に%コストを引き下げる、という意味ではありません。

%コストは、同じエリアであっても広告主やテレビ局によっても異なります。その単価決定には多くの付帯条件・要素があるため何をもってして一番正しいのかは言い難いですが、もし1人あたりに期待する広告効果が全国のどのエリアでも同じであるならば、その単価は同じであるべきでしょう。逆に違う場合はその差が勘案された上で%コストの正当性を見極めなくてはなりません。参考例として、期待値がどのエリアでも同じだと仮定して、全国のTVスポットCMの%コストから1,000人あたりの「テレビCM出稿単価」を図1で比較してみます。

地上波の民放が1局しかない徳島県を除くと、関東エリアが最も高い出稿単価となっています。しかし、次いで高いのが必ずしも関西や中京エリアの人口が多い都市圏でないこともわかります。

エリアアロケーション
図1:テレビCMの放送エリア別(32エリア)の出稿単価CPM比較

* 1,000人あたりのテレビCM出稿単価は、これまでの経験値に基づき本ブログご説明用に試算。例:関東地区の%コストを約20万円(個人全体)。1,000人あたりの人数は5歳以上男女(平成30年1月1日住民基本台帳をベースに独自試算)

 

放送エリアとマーケティングエリア区分

現在、日本国内のテレビ放送(地上波)は32の放送エリアに分かれています。テレビCMの出稿単価を比較する際には、通常この32区分で比較することになります。しかし、世帯比率で全国の約35%、人口比率で約34%を占める関東エリア1都6県と、例えば世帯数・人口比共に5%未満となる県単位のその他エリアとを横並びで比較することは、多忙なテレビCMバイイング担当者の実務においては現実的に少々厳しいことでしょう。

エリアアロケーション
図2:32放送エリアとマーケティング連動したエリア例

また、32エリアはあくまで放送法などで設定された区分であり、必ずしも広告主が求めるマーケティングエリア区分と合致している訳でもありません。そのため、エリア別の最適な投下量やその単価の見直しなどは容易な作業ではありませんでした。

エリアアロケーション を考える際には、全国のテレビ個人視聴量を算出し(2020年4月より個人視聴率の測定も全国で始まりました)、またこれまで放送エリアをまたいでは計算できなかった*テレビCMの投下量効率を広告主の任意エリアに再区分して、新たにテレビCMの最適配分のための指標を試算します。

 

GRPがなぜ放送エリアをまたげないのかは、こちらの記事もご参考にしてください。

テレビCM とは〜視聴率とルールの話

 

エリア毎の投下コスト比率は最大3倍

例えば、広告主の持つ8つの支店や営業所エリアに再区分してみます。この8エリアに仮に世帯1,000GRP(個人全体だと約500GRP)のテレビCM投下を行った場合、エリア別人口でみた1,000人あたりの投下コストは図3のグラフとなります。

エリアアロケーション
図3:エリア別人口でみた1,000人あたりの投下コスト①(エリア均一投下量)

エリア毎の投下比率にはかなりの差があります。もちろん、エリア毎の販売数量やシェア、営業戦略的に強化すべきエリアの有無など、任意変数を加える場合もありますが、仮に人数あたりの広告の期待値が同等であるとすれば、現状1,000人あたりの投下コストには約2倍の開きがあることになります。

この投下コストの差が意図的に望んだものであれば(そういう場合も多いとは思いますが)、その理由を論理的に説明、客観的に把握が出来る状態にしておく必要があります。

 

また、上記のようにテレビCMを全国一律GRPで行う広告主もありますが、エリア毎にGRPに増減(ウェイト)をつけている場合も少なくないはずです。その場合、この差はさらに図4のように変化します。

エリアアロケーション
図4:エリア別人口でみた1,000人あたりの投下コスト②(エリア別で増減あり*)

このような配分では、1,000人あたりの投下コストが最も高くなっている首都圏(1都3県)と、逆に低い東北や九州とでは最大3倍以上も開きがあることになります。もちろん、首都圏の人が自社のその商品を東北や九州より3倍多く買ってくれるポテンシャルがあればそれでも問題ないでしょうし、逆にそうあるべきです。

しかし、もしそうでないのであれば、エリアアロケーション のひとつの視点がここにありそうです。例えば、軽自動車の世帯あたりの保有台数は、首都圏よりもそれ以外のエリアの方が圧倒的に高くなっていますので、このような比率であれば即座に修正が必要です。

*エリア毎増減:投下量を関東(1都6県)・関西(2府4県)・中京(3県)は1,200GRP、主要エリア(札・福・仙・広)は800GRP、福井・徳島・佐賀・宮崎を300GRPとして、その他地区は500GRPで試算。ただし、この場合も合計投下コスト(全国)は世帯1,000GRP全国均一の場合とほぼ同額。

 

%コストの引き下げが目的ではない

では、どうするべきか。「首都圏(関東地区)の%コストをもっと下げてもらえばいい」と考えるのは、後に浅慮を悔いることになります。テレビCM(特に現状の地上波)は放送枠が有限であるため、安くたくさん買うことが必ずしもテレビ局には喜ばれません。また、テレビCMプラン(線引き)通りにアクチャル比率100%を獲得することだけを宣伝部(バイイング担当者)がKPIにしてアクチャルで広告代理店に握らせると、ショートすればサービス枠を提供してもらうだけ、という対策だけに陥ってしまっているのは中長期的な解決策となっているともいえません。

テレビCMはひとつの視聴率しか無かった時代から、新たなに使える指標がどんどん増えてきています。それらをもっと上手に活用していくことで、真の「テレビ×デジタルの最適化」が達成できるとプログラマティカでは考えています。そのために、特にテレビCMコストがマーケティング費用の大部分を占めている広告主においては、まず「 エリアアロケーション 」へ取り組まれることをご提案します。

以下に、「ビール飲料」を参考例に整理してみました。

 

<参考例> ビール飲料の場合

プログラマティカで エリアアロケーション のベースを試算してみた「ビール飲料」の参考例です。図5では、国税庁の平成28年度分「酒類販売(消費)数量等の状況表」を元にテレビCMの投下コストと比較してみます。この例ではテレビCMの投下量を全国一律ではなく下記の比率で試算しています。ただし、投下コスト合計(全国)は、世帯1,000GRPを全国均一で投下した場合とほぼ同額です。

*CM投下量は関東(1都6県)・関西(2府4県)・中京(3県)は1,200GRP、主要エリア(札・福・仙・広)は800GRP、福井・徳島・佐賀・宮崎は300GRP、その他地区500GRPで試算

 

図5:エリア別の人口・投下コスト・消費量のシェア比較

今はコロナ禍の外出自粛要請もありますし、何よりもご自身の健康のために「外飲み」をされることをお控えいただきたいですが、元来は仕事終わりの “旨い” ビールは、必ずしも家(居住エリア)だけで飲まれるものではないため(家庭用と業務用の消費量は半々)、都市圏ではその中心となる都府県での消費量が大きくなります。しかし、全国8エリアに区分するとターゲット人口比率とビール消費量比率は概ね近いことがわかります。ですが、テレビCMに掛かっている投下コスト比率には少々偏りがありそうです。

 

消費財(CPG)の場合、すでにテレビCMが全国一律GRP投下でない場合も少なくないですし、エリア毎のマーケットシェアの影響や戦略的なコスト増減も当然あります。また流通対策上、テレビCM投下が不可欠である場合もありますが、この効率性を把握して行われるメディアプランニングと、そうでないプランニングとでは大きな差が生じると考えます。

 

ビール消費量とテレビCM投下コスト比較

首都圏と九州・沖縄では、消費量は1.3倍だが、投下コストでは3.5倍に

図6:エリア別のビール消費量とテレビCM投下コスト比較

ビール飲料向け分析では「20歳以上男女」をターゲットとして、エリアアロケーションを検討する任意の営業拠点を8エリアに区分して⽐較をしています。このように自社の営業エリア区分や、商品・ブランドに合わせたデモグラ別ターゲット数、市場規模などを変数として勘案することで、エリア別のテレビCM適正コストを再検討することが可能になりそうです。

 

テレビCMの効率配分は不十分

図7:都道府県比較の簡易分析シート・サンプル

テレビCMが特定エリアに集中する傾向から発生する過剰コストや偏りを再精査し、「全国エリア=総人口」の視点で投下コスト効率を最大化させるコンサルティングを行っています。広告予算はこれまで意外にも比例配分となっていなかったり、自社戦略に則った適正配分が上手く行えていなかったりすることが少なくないようです。

プログラマティカでは、テレビCMとデジタル広告の最適なアロケーション比率は全国一律で最初に求めるのではなく、まずはブランドやキャンペーン別に各エリアに対する最適な広告予算のアロケーションが行われた上で、さらにテレビCMとデジタル広告の予算比率の最適化を行うべきという考え方を持っています。「 エリアアロケーション・コンサルティング 」では、各エリアに対する投資配分を再算出し、最終的にブランドごとのテレビCM×デジタル広告のリプランと実行までをお手伝いします。

*本ブログはオリジナルレポート「 エリアアロケーション・コンサルティングのまとめ 」(2019年)を再編集・加筆しています。

 

Programmatica Inc.
楳田 良輝|Yoshiteru Umeda