It always seems impossible until it’s done.
インプレッション取引PoCプロジェクトを発足

インプレッション取引PoCプロジェクトを発足

PoC(概念実証)のためのプロジェクトを始めます。

プログラマティカでは、かねてより取り上げてきました国内のテレビ広告取引における「インプレッション取引の導入」に関しまして、新たなプロジェクトを発足します。「インプレッション取引PoCプロジェクト」の概要は以下の通りとなります。参加をご希望される場合は、下記概要をご確認いただき、専用の「お問い合わせフォーム」よりお問い合わせください。

なお、2024年4月に実施してまいりました「インプレッション取引を研究する会」は、5月以降は新プロジェクトに引き継がれます。

 

◆「お問い合わせフォーム」はこちら

 

プログラマティカが提唱する「テレビ×ストリーミング」時代の評価の考え方

 

プログラマティカが提唱する「テレビ×ストリーミング」時代の評価の考え方

 

テレビCMの価値がディスカウントしているのではないか?

企業価値の評価方法のひとつにSOTP分析(サム・オブ・ザ・パーツ分析)があります。複数ある事業の価値を個々に評価し、時価総額がそれらの合計より上回っているか否かを判定する手法です。分析には専門的な知識が求められますが、時には「コングロマリット・ディスカウント」と呼ばれ、事業を多角化した複合企業の価値が、事業単体の価値の合計よりも低くなってしまっている状態が発生することがあります。

今、視聴率をベースとしたGRP取引が、テレビCMの価値をディスカウントさせてはいないでしょうか?世帯だけだった時代から、個人視聴が細かに測定できるようになり、デモグラ以外のカスタムターゲットの視聴状況も把握可能となってきています。ですが、それらのセグメントを大きく括り直してしまっている結果、トータルの価値が低減している可能性です。

関東エリアA局の1週間分のスポットCM集計から、テレビCMの平均CPM(広告表示1,000回単価)を試算してみると335円となりました。もちろん、細かくは局毎にも、時期などによっても変動しますが、それでも概ね350円前後ではないでしょうか。ブランド毀損やアドフラウドがない、基本的にプレミアムコンテンツしかない地上波テレビCMのこのCPMは、UGC(ユーザー生成コンテンツ)ではない、TVerやABEMAなどのプレミアムコンテンツの広告付き無料ストリーミング(CTV広告だけに限らない)が、概ね2,500〜3,000円前後で取引されていることを考えると、少々安すぎるような気がしてなりません。
*%コストを15万円として独自試算

GRP取引がテレビCMの価値を低下

テレビCMの平均CPM

 

テレビCMは「総量評価」のインプレッション取引で収入総額を増加できる

プログラマティカでは、地上波のテレビCMは「総量評価」でインプレッション取引することで収入総額を増加できるのではないかと考えています。やや極論ですが、先述の平均CPMを算出した実際の視聴データを元に、次の2つの条件でスポットCMを全枠取引したら「総収入はいくらになるのか?」の試算を行いました。
*プログラマティカが提唱するテレビCM評価の考え方

① 女性20歳以上のインプレッションだけでセールス
ターゲットCPM(TCPM)は、F1:1,400円、F2:1,200円、F3-:800円、F3+:600円
*「F3-」は「F3」、「F3+」は「F4」と同義

② 高年層を除く若者層を中心のインプレッションだけでセールス
TCPMは、MF1:2,000円、MF2:1,500円

結果は、どちらも3〜4割程度の増収が見込める試算となりました。もちろん、全CM枠が同じターゲット層だけに向けてセールスできることは現実にはありえませんので机上でのお話です。しかし、設定したCPMが大きく「現実離れ」しているようにも思えません。問題は、現状ではセグメント毎に切り売りすることができない地上波のテレビCMを、どうすれば「インプレッション取引」できるのか?のアイデアです。

インプレッション取引PoCプロジェクトでは、その概念実証を行います。アイデア(方法)は概ね固まってきました。

「総量評価」で収入総額を増加

「総量評価」で収入総額を増加

「総量評価」で収入総額を増加

 

インプレッション取引PoCプロジェクト

<概 要>

主 旨
・総収入アップを目指した新たなテレビCMセールスの有用性を検証する
・ベースとなる研究や準備費用などを複数局で持ち合う形で軽減させる
・プロジェクト管理ツールを導入し、業界内のナレッジ共有を促進する
・キー局、準キー局、ローカル局がそれぞれの環境でも検証できる仕組みを作る
・系列、放送エリアを越えて危機回避に向けた自局の経営判断の根拠としていく
・既存の作案ノウハウを持ち寄り、さらに進化させた共有資産とする

募集対象
全国地上波の民放テレビ放送局
また、本プロジェクトにご協力いただける「広告主」「測定事業者」「広告会社」も同時に募集しています

開 始
2024年5月中旬予定(初回締切は4月30日/その後毎月末締切)
*プロジェクト実施のために必要な参加局数を5局以上に設定

形 式
原則的にオンラインミーティング(zoomを予定)
*必要に応じてオフラインミーティングも実施

費 用
1)プログラコース(月額30万円)
2)マティカコース(月額10万円)
*3ヶ月更新(更新タイミングで退会可)
*参加時に契約書締結
*途中参加の際は開始月に遡り経過月数分(×10万円)を一括支払

参加条件
担当部署および担当者の設置(専任でなくて可)

データ
各テレビ局が独自に準備(指定データはなし、現在利用可能なデータでも問題なし)
*視聴データ費用はテレビ局負担、ただし特定データを追加費用で提供することは可能

禁止事項
・プロジェクト内容の無許可での外部発表や参加社以外への開示
・システムおよび研究ノウハウ等に関わる特許などの無断申請・取得など

 

その他、詳細は参加契約の際にご説明いたします。

 

◆「お問い合わせフォーム」はこちら

 

各コースの概要(予定)
コース名プログラコースマティカコース
全体ミーティング月1回月1回
個別ミーティング月1〜2回
プロジェクト管理ツール
研究資料の共有・アーカイブ利用
オフラインミーティング
社内報告会や資料作成への協力
自局データの分析レポート
作案やデータ分析のアドバイス
作案やデータ分析の補助作業
外部説明会や営業同行
月額費用(税別)30万円10万円
請求/支払前月末請求/当月末現金支払前月末請求/当月末現金支払

*プロジェクトの状況により回数が増えることがあります
△はオプション設定となり別途費用が必要です

 

 PoC(概念実証)のフローとポイント整理

PoC(概念実証)のフローとポイント整理

 

ターゲティングと測定の“一気通貫”(共通化)

ターゲティングと測定の”一気通貫”

 

広告主のメリット検証も必要

インプレッション取引は、テレビ局の総収入アップに貢献するはずだと考えていますが、果たしてそれは、「広告主サイドにおいても価値があることなのか?」それも検証していくことが必要です。しかし、そこは一朝一夕には判断できないため、PoCを通じて同時に検証していくことになります。ただ、現時点でも次のようなことは想定できます。

長年テレビCMをやっているため%コストは低廉だが、他より安価すぎるのか?なかなかいい絵柄とならない。だが、単純なコストアップは受入れ難かった
ターゲット含有(率)を重視して、時間帯を狭く設定しているが、トータルではさほど効率は上がらない。しかし、さらにゾーンを絞ると%コストが見合わなくなる?と困っていた
そもそもオールターゲットを求めていないため、テレビCMは効率が悪いと考えているが、テレビCMの持つリーチ力は魅了。不要なリーチ(インプレッション)を投資対効果に含めなくていいのなら、価値はありそうだ。テレビCMを復活させてもいいかも知れない。
ターゲティングできるCTV広告やデジタル広告は効率が良いが、プレミアムコンテンツのCPMはバカ高く、安いものはブランド棄損やアドフラウドの危険性が高まる。その点、テレビCMは信頼できるが、テレビCMだけが取引指標が視聴率でわかりにくい。統一して欲しいと思っていた。
SASで初めてテレビCMを実施し、その効果は実感している。もっとCM量を増やしたいが、SASは買える枠(番組)が決まっているのと、比較的単価が高めに思える。プランニングの多様化と運用効率の面で、スポットCMには興味がある
ローカルの地場企業のためGRPでなく、現在も「本数」で買っているが、最近は視聴率が悪く、少々割高になっているのではと感じていた
新たにテレビCMを始めたいが、%コストの算定基準がわかりにくい。また、既存広告主よりも高く買わされるのでは?との疑念もある
×何十年も、多くのテレビ局と取引しており、%コストもほぼ最安値の自信あり。今さらインプレッション取引で買う理由がない。損をする
×インプレッション取引には意味があると思うが、結局パネルで測定したものをインプレッション換算して足し上げることは意味不明である。
×インプレッションでテレビ広告を買いたいのなら、今でもCTV広告はあるし、将来はFASTなどが日本でも始まるだろうから、待つのが善策
×ターゲティングできることがインプレッション取引の大前提。RMNなどの購買データが連携できるCTV広告に予算を使った方がいい*リテールメディア・ネットワーク
事前確認では広告主のターゲット効率も向上

また、PoCに向けた事前確認を行ったところ、某清涼飲料水のキャンペーン実績をベースにした検証では、テレビCM費用が50%だったとしても、ターゲット効率はMF1(男女20〜34歳)のみのCPMで3,356円→2,805円(△551円)、MF1〜2(男女20〜49歳)だと1,100円→1,078円(△22円)となりました。その際のインプレッション数は費用削減の50%に対し、MF1で59.8%(+9.8p)、MF1〜2でも51.0%(+1.0p)にとどまっています。

TCPMをMF1:2,000円、MF2:500円、その他1円と設定した総量評価(totalTCPM)の結果です。広告主にとってはターゲット効率が、テレビ局にとっては収益効率が悪い、totalTCPMが350円を下回るCM枠を排除したシミュレーションです。(340本→155本)
*実績キャンペーンの個人ALL平均CPM(%コスト15万円で試算)

シミュレーションの平均CPMは350円→450円(+100円)とアップになりますが、これは、総インプレッション数に対するターゲット層へのインプレッション数シェアがF1:5.6%→8.3%、F2:11.5%→13.6%、M1:4.8%→7.7%、M2:9.7%→12.1%と質が向上したことに貢献しています。あくまでも、過去実績の中での最適化のため限界はありますが、広告主にとっても総量評価による「インプレッション取引」でテレビCMの価値が「質と量」で再定義できる可能性があることは示しています。

某清涼飲料水キャンペーンの実績をベースに検証

*検証したキャンペーンは関東エリア4,200万人/全日型
*ターゲット設定は発売当時の取材記事などを参照(20〜30代の若者)

 

PoCに向けた事前確認において

インプレッション取引が有効な枠と収入増を検証する

インプレッション取引のPoCに向けた事前確認をさらに細かく行なったところ、十分に予測はしていたことですが、はっきりと分かってきたことがいくつかあります。例えば、設定するTCPMによってはGRP取引のままの方が(平均CPM350円とした場合)CM収入が高くなる枠もあること、あるいは、特定セグメントだけでインプレッション取引をしようとすると、非常に高額なTCPMを設定する必要があることなどです(特定セグメントだけのセールスはCM在庫管理面での問題もあり)。最新の事前確認では、次の5パターンのTCPMを時間帯/曜日別で試算しましたので、その試算一覧と詳細の一部をご紹介します。

MF1:2,000円、MF2:1,500円
MF1:3,000円
F1:5,000円
MF3-/MF3+:500円
MF1:1,500円、MF2:1,000円、MF3-/MF3+:500円
*上記以外のセグメントは①〜⑤全て1円で試算

 

試算一覧 *単位は万円
検証パターン ①GRP取引のみ
 ②imp取引のみ
③GRP取引+imp取引増減率
①GRP取引比
GRP取引分imp取引分合計
検証①163,000229,00041,300188,700230,000141%
検証②154,50089,50094,400183,900113%
検証③146,90096,30088,000184,300113%
検証④160,30096,50084,500181,000111%
検証⑤228,90045,200223,200227,600140%
     
① MF1:2,000円、MF2:1,500円の場合

インプレッション取引が有効な枠と収入増の検証

インプレッション取引が有効な枠と収入増の検証

 

④ MF3-/MF3+:500円

インプレッション取引が有効な枠と収入増の検証

インプレッション取引が有効な枠と収入増の検証

 

インプレッション取引PoCプロジェクトでは、「自局データ」(任意の時期/期間)でこれらと同等レベルの分析を行うことが可能です。
*分析に使用する視聴データは、自局で契約のあるデータ、あるいはこちらでご用意します。ご相談ください。

 

時間帯ゾーンでの効率改善には限界がある

テレビCMはターゲティングできない、とよくいわれますが、全くできない訳ではありません。時間帯ゾーンを絞ることなどはテレビCMにおけるターゲティング手法のひとつです。例えば、MF1やMF1-2にターゲットを持つ広告主は「全日」でなく「コの字」でスポットCMを発注することでターゲット効率を改善します。当然、%コストは高くなりますが、個人全体視聴率に占めるターゲット視聴率の割合も高くなるだろうと考えるからです。しかし、この時間帯ゾーンを使ったGRP取引での効率改善には限界があるようです。

MF1/MF1-2のインプレッション比率

全日の総インプレッション数(個人全体)に対するターゲットへのインプレッション比率を平均で見た場合、MF1で10.6%、MF1-2でも27.8%となっています。そこで、ターゲット比率の低い平日5〜7時台、11時〜18時台を除外したコの字型のゾーンだけの平均を見てみます。たしかに、効率は少し改善されますが、MF1で2.7p、MF1-2でも4.3pのアップにとどまります。

MF1/MF1-2のインプレッション数

 

若者層はテレビをもう観ないのか?

MF1では10%強、MF1-2でも30%前後となるこれらのインプレッション比率を見ると、「若者層はテレビをもう観ないのか?」と考えてしまいそうですが、果たしてそうなのでしょうか。たしかに、ストリーミング視聴は年々増加していますし、単身世帯でテレビを持っていない若い人も多くなっているようです。しかし、テレビCMを1本1本個別に見ていくと、MF1でも25%以上のインプレッション比率を持つCM枠もあれば、MF1-2ではそれが6割近くになるような場合もあります。しかし、逆にMF1比率が3〜4%しかないこともあり(MF1-2では12〜13%)、振れ幅が非常に大きいのです。これは全日だけでなく、コの字にゾーンを絞っても概ね同じことがいえます。

そうなってきますと、広告主は時間帯ゾーンで絞ってもターゲティング効率が大きくは改善しませんので「テレビはターゲティングできない」となり、CPM(現状は%コストから試算)も上がりにくくなります。テレビ局もコスト(CPMと同義)が上げられないので「いいとこ取り」にならない作案をすることが必要となってきます。

GRP取引でのMF1インプレッション比率の分布

GRP取引でのMF1-2インプレッション比率の分布

 

総量評価のインプレッション取引はターゲット比率と相関

インプレッション取引ならCPMとターゲット比率は相関します。設定が単一CPMなら完全相関しますが、先述の通り特定セグメントだけでセールスするとCM在庫管理は難しくなりますし、セルスルーも悪化する恐れがあります。また、TCPMも非常に高額になりやすいです。そこで総量評価でインプレッション取引することが必要となってきます。総量評価でもCPMとの高い相関が得られます。「いいところ」を「いい価格」で購入してもらえばよいのです。CPMが仮に倍になったとしても、ターゲット効率が2倍以上になれば広告主にとっては十分に価値があります。そして、CM在庫は理屈上、2倍に増えます。また、GRP取引でもこれまで起こっていたターゲット比率のばらつきを抑制することが可能になります。

広告主はCM価格をやみくもに引き下げたり、テレビCM予算をとにかく削減したい訳ではありません。計画した予算を効率良く使いたいのです。ただし、全てをインプレッション取引するよりも、GRP取引の方がCPMで高くなるCM枠も存在します。また、需給バランスでインプレッション取引とGRP取引の割合をどうするか?(複合セールス)などの対策は必要ですが、GRP取引の平均CPMをフロアプライスとしてインプレッション取引を導入していけば、テレビ局の総収入額は必ず増額します。

インプレッション取引でのターゲット比率

インプレッション取引とGRP取引の複合セールス

 

 

全国32放送エリアでのCPM差はローカル局にチャンス

最後に、全国32放送エリア別の平均的な%コストをCPM換算すると、大きな差が生じることはこれまでにもご紹介してきました。この全国で120〜400円程度のばらつきのある平均CPMですが、ここまでの試算に使用している関東エリアの約350円と比較をすると、ローカル局はインプレッション取引で設定するTCPMを幾分か低め設定したとしても、十分に収入増が見込めるエリアが数多くあります。参考までに、当社で独自試算した全国32放送エリア別CPMの比較です。ちなみに、デジタル広告は原則的に全国一律CPMです。

全国32放送エリアでのCPM差

 

<2024年4月18日加筆>
インプレッション取引を研究する会」(4月18日開催済)において、totalTCPM(総量評価)の考え方が非常にわかりにくかったように感じましたので、以下の説明を追加しました。

「総量評価」の考え方をもう少しわかりやすく

totalTCPMでのインプレッション取引を簡易的に計算した場合の例

広告主A〜Cが、それぞれのセグメント毎にTCPMを評価します(買ってもいいと思う単価)。その際、各広告主は次のようなターゲット設定をしているとします。
*( )内の金額はTCPM

  • 広告主A:F1のみがターゲット(5,000円)
  • 広告主B:MF1をメインターゲット(1,500円)、MF2を周辺ターゲット(1,000円)
  • 広告主C:高齢層ターゲット(500円)
  • 広告主D:個人全体(従来通りのGRP取引)

totalTCPMでのインプレッション取引を簡易的に計算した場合

対象となるCM枠は、個人全体視聴率で3.0%(金曜日/25時台/PT)です。仮に%コストを15万円でGRP取引すると450,000円となります。そこに各セグメントでのアクチャル・インプレッション数を掛け合わせて、広告主A〜Cへ、それぞれセールスした際のCM金額を算出します。結果は広告主Bが最も高い金額(574,161円)となりこのMF1+MF2に効率的なこのCM枠は広告主Bに割り当てられます。当然、同じ個人視聴率3.0%のCMでも、視聴者構成が全て異なりますので、割り当てられる広告主は都度変わることになります。もちろん、GRP取引の広告主Dが最も高くなるCM枠も存在しています。

 

検証の数も精度も、まだまだ十分ではありませんが「インプレッション取引の導入」による可能性を一緒にPoC(概念実証)してみませんか。

「インプレッション取引PoCプロジェクト」へのご参加をお待ちしております。

◆「お問い合わせフォーム」はこちら

 

参考:プログラBLOG(2023年11月11日)

テレビCMの「インプレッション取引」を考察する