It always seems impossible until it’s done.
周辺ターゲットとアウト・オブ・ファネル

周辺ターゲットとアウト・オブ・ファネル

周辺ターゲットとは

プログラマティカでは、「総量評価によるインプレッション取引」を提唱する中で、テレビCMの価値をより広く捉える概念として「周辺ターゲット」を定義しています。周辺ターゲットとは、広告主が広告キャンペーンを実施する際に設定する「メインターゲット」に加えて、広告対象として価値があるサブターゲット群 のことを指します。例えばテレビCMでは、メインターゲット以外にも広告が到達します。逆に、それらを除外することもできません。もちろん、メインターゲット以外はターゲットではない、という場合には当てはまりませんが、サブとなる周辺ターゲットが全く存在しないということも少ないのではないでしょうか。

したがって、デジタル広告でターゲティング配信した際の非ターゲットへの配信(オンターゲット以外のインプレッション)と、テレビCMの周辺ターゲットへの到達では意味が大きく異なります。テレビCMを評価する際は、この周辺ターゲットへの広告効果も考慮した「総量評価」を行う必要があります。

 

テレビCMの特徴を理解するためのデジタル広告とのそもそもの違い

 

総量評価によるインプレッション取引などについては、過去の投稿や執筆をご参照いただければと思いますが、今回は周辺ターゲットと「アウト・オブ・ファネル」(Out-of-Funnel)の違いについて取り上げます。また、海外の資料ではあまり見かけませんが、国内では「アウトサイドファネル」(Outside the funnel)という言葉もあります。これは、アウト・オブ・ファネルと同義で使用されることもありますが、少し違った意味で使われることもあるようです。

 

周辺ターゲットとアウト・オブ・ファネルは全く別モノ

なぜか、「アウト・オブ・ファネル」(アウトサイドファネルも同様)と「周辺ターゲット」は混同されがちなのですが、両者はまったく異なる文脈と評価軸で語られるべきものです。2つを並べてみた図でご紹介します。アウト・オブ・ファネルは、消費者行動を理論的に説明する際などに使用される「マーケティングファネル」において(仮にそれを「AIDAモデル」とすると)、

  • Awareness:認知
  • Interest:興味
  • Decision:検討・決定
  • Action:行動

の外側に位置するという意味での “Out of 〜” ですので、ファネルに入る前の人たちを指します。例えていうなら、現状、そのブランドやカテゴリーを知らない・考えていない・まだ関与していない層のことです。ただし、アウト・オブ・ファネルは、広告主側から見ると「オンターゲット」であることが前提です。
*認知はしているが興味・関心までには至っていない層のことを「アウトサイドファネル」と呼ぶ考え方もあるようである。ただし、それは「認知」の状態であるため、アウト・オブ・ファネルの概念にはない。

「マーケティングファネル」と「テレビCMにおける広告リーチの構造と評価軸」

 

テレビCMにおける周辺ターゲットとは

一方、冒頭で申し上げたように、テレビCMなどでは広告主が想定する メインターゲット以外にも広告が到達します。これを「スピルオーバー・インプレッション」(副次的な広告到達)と言いますが、そのうち 広告価値のあるインプレッション(Valuable impression)と、あまり価値のないインプレッション(Non-Valuable)の基準となるのが、周辺ターゲットであるか、否かです。

つまり、周辺ターゲット=テレビCMにおける“価値あるスピルオーバー” とも言い換えられます。

 

整理すると、

アウト・オブ・ファネルは、メインターゲット以外の視聴者を指す言葉ではなく、ブランド認知や検討のステージにすら入っていない、ファネルの外にいる未接触・無関心層 を意味します。もちろん、この層に対するテレビCMの広告効果も十分に考えられます。

ただし、デモグラターゲティングでMF1層をメインターゲットとした場合に、MF2層やMFT層といった近接するターゲット、あるいはメイン以外のすべてを単純にアウト・オブ・ファネルと見なすのは誤解です。アウト・オブ・ファネルとは、ファネル(たとえば認知・興味・検討・行動の流れ)に入る前の段階にある層を指し、デモグラの違いとは本質的に無関係です。

周辺ターゲットは、ファネル外(Out of Funnel)ではなく、メインターゲット(Core Audience)に近く、行動や関心で重なる部分のあるセグメント です。テレビCMなどでは、こうした層にスピルオーバー的に広告が届くことが避けられませんが、単なる “到達ロス” としてではなく、広告主が意図をもって評価し直すことで「再定義されたターゲット」として取り扱うことが重要です。英語ではこうした層を「Satellite Audience」と呼ぶようですが、それらを戦略的に「Secondary Target」へと位置づけることができるでしょう。

このように、メインターゲットだけに絞って効率性を追求するのではなく、濃淡をつけた複数の「オンターゲット」を総量で捉え直すことが、テレビCMが持つ本来の価値を最大限に引き出す鍵となります。インプレッション取引におけるCPM(広告単価)も、こうしたターゲット構造に応じて適切に評価されるべきです。

周辺ターゲットとは、広告が副次的に届く層を、戦略的に再評価し、ターゲットとして再定義する視点です。この理解こそが、テレビCMを本質から見直す起点になるとプログラマティカでは考えています。

 

Programmatica Inc.
Yoshiteru Umeda|楳田良輝