It always seems impossible until it’s done.
AIエージェント時代は本当に来るのか?

AIエージェント時代は本当に来るのか?

実装から始める現実的なアプローチ

最近、「AIエージェント」がちょっとしたバズワード的になっています。

マーケティングや広告業界だけでなくとも、開発や業務自動化の領域では、「もうAIがすべてやってくれる」「これからは人間の指示も不要」などといった期待が飛び交っています。確かに、そうなのかも知れません、

一方で、プログラマティカではこうも思っています。
“では、その時代はすぐに来るのか? まずは生成AIと協働し、実装できるものから段階的に組み上げていくべきなのでは?” と。

つまり、AIを業務の中に適切に取り込んでいくことが先であり、AIに任せられる部分は積極的に任せればいい
ただし、「AIエージェント=完全なる自動化」にこだわりすぎると、むしろ現場を見失ってしまう危険もある、ということです。

 

なぜ今、「AIエージェント」がバズっているのか?

OpenAIの「GPTs」や、Googleの「Google Agentspace」をはじめとする大手テック企業によるエージェント技術の実装環境など、誰でも手軽に “エージェントを作れる” 時代が到来しようとしています。それによって、

  • ノーコードで作れる “それっぽい” エージェント
  • Slack連携やRPAを組み合わせた業務ボット
    *Robotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)

などが急増し、まるで “未来が来た” かのような雰囲気が漂っています。

しかし現状の多くは、自戒も込めて書くと、

  • 単発のタスクをこなすボット
  • 決まった条件下で動くスクリプト

であり、前述した本来のエージェント──目的に応じて自律的に行動し続ける存在──には、まだ程遠いのが実情です。

 

「まずは実装」こそ、今とるべきアプローチ

今こそ必要なのは、地に足のついた段階的な開発です。
プログラマティカでは、以下のようなステップを踏むのが現実的だと考えています。

フェーズ①:まずは生成AIと人が “協働” する

例:ChatGPTに施策案を出してもらい、人間が修正・選定する
AIのアウトプットを前提に、人が “意図” や “背景” を補完していく段階。
この段階では、AIはあくまで「発想支援」や「下書き補助」として機能します。

フェーズ②:人とのやりとりをテンプレート化し、ツール化する

例:Gradio+Pythonで、よく使う処理をUI化し、社内共有
協働プロセスの中でパターン化されたやりとりを、半構造化し、ツールに落とし込む段階です。
このフェーズでは、属人化の排除と再利用性の向上がポイントになります。

フェーズ③:それを自動実行できる構造に整理し、半自律化する

例:Zapier(ノーコード自動化ツール)や LangGraph(マルチエージェント設計フレームワーク)などと連携し、目的に応じて動くエージェント設計へ。
業務目的ごとに設計されたルールや状態遷移をもとに、AIを「エージェント=行動モデル」に近づけていく段階です。
このフェーズで重要なのは、単なるAIの導入を “エージェント化” と混同しないことです。

 

現在、生成AIはさまざまな業務に取り入れられ始めています。
施策案の下書き、データの整理、アイデア発想の補助・・、こうした活用はますます加速していくでしょう。

しかし、それがそのまま「AIエージェント」になるわけではありません

AIを使うことと、AIに “任せる” ことの間には、超えてはならない──もしくは慎重に越えるべき境界線があります。

このようなプロセスを通じてこそ、「ブラックボックス的なAI活用」ではなく、人とAIが “意味を共有しながら” 協働できるエージェントの形が見えてくるのです。

なぜ慎重であるべきか?
AIエージェントにすべてを任せきってしまうと、次のようなリスクが生じます。

  • 後からのバージョンアップや運用改善が難しくなる
  • 提供事業者(API提供元など)の戦略変更に対応できない
  • 意図しないアウトプットに気づけず、トラブルの温床になる

つまり、「全部AIエージェントに任せる」という構えこそが、実は非効率で不安定になりうるのです。

だからこそ、まずは実装──人の手を通じて理解しながら、徐々に自律性を高めていく
この設計思想こそが、これからのAI活用における “確かな道筋” になるのではないでしょうか。

 

AIエージェントは、“作られる”のではなく“育てる”もの

AIエージェントの未来は、確実にやって来ると思います。
けれどそれは、誰かが魔法のように完成品を届けてくれる未来でもありません。人とAIが協働し、日々の業務の中で “育てていく” ものです。

とはいえ、この進化のスピードが、どれほどのものなのか──
正直なところ、それはまだわかりません。

しかし「エージェント化」は、実装力と現場知が問われる新しい創造領域であると考えています。今こそ、現場から、そして現実から、エージェントを育てていくときなのかもしれません。

一方で、「AIがすべてをやる時代」がやって来ることもまた、避けられない現実でしょう。もっとも、それは「AIに丸ごと任せる」時代ではなく、“任せられる構造設計” が前提となる時代です。

今回のプログラBLOGは、その「育て方」──現場から始まる実装フェーズのリアリティに焦点を当てたものです。AIエージェントを否定するものではありません。
未来を見据えながら、足元をつくる。それが、今できる最も確かな準備なのではないでしょうか。

 

Programmatica Inc.
Yoshiteru Umeda|楳田良輝