前略。
結論が出る前の話や
手ざわりの残る出来ごとなどを
余白にて、書きとめています。
今回は、
テレビ信陽(SYT)の経営企画室、森崎ミノルが
自身の中期経営計画を再考しながら、
ふと考えた「テレビの次の姿」
という話です。
なかなか進まない中計書Ver2.0
この話は全てフィクションである。
最近、森崎はAIエージェントによる広告運用の議論を追いかけていた。
どうやら広告の世界では、
AIが自律的に広告を運用する時代が近づいていると言われている。
森崎は、この流れの中でまず変わるのは、
広告代理店の役割だろうと思った。
まず、入札や最適化といった「運用」はAIに置き換わり、
やがて「メディアプランニング」の多くも自動化されていく。
代理店の仕事は、
最終的には「戦略」や「意味づけ」の領域へと
集約されていくのではないか ――
そんな議論が各所で語られているのを知った。
しかし森崎が気になったのは、
その先の話だった。
AIによってテレビも変わるのか?
AIエージェントが “広告を買う” 世界で、
テレビというメディアはどう見えるのだろうか。
そこで森崎は、
ある考え方にたどり着く。
テレビはターゲティングメディアではなく、
確率分布メディアなのではないか。
テレビCM1本の広告露出、
つまりインプレッションの中には、
・価値の高い接触
・中間的な価値の接触
・ほとんど影響のない接触
が混ざっている。
まだGRPで広告取引するローカル局の実態はさておき、
最近流行りのターゲット評価やインプレッション取引では、
ターゲット以外の接触は “全て同じもの” として扱っている。
しかし実際には、
その中にも「行動変化」を生む接触が含まれている。
テレビとは、
こうした価値の異なる接触が複数混在するメディア
なのではないか、ということである。
もしそうだとすれば、
これまでと評価の方法も変わるはずだ。
ターゲットだけを見るのではなく、
接触全体の中にある価値の分布を捉え、
その総量がどれだけ行動変化を生んだかを
測定することはできないだろうか?
SYTならではの可能性

森崎は、この考え方が
すでに一部で「総量評価」と呼ばれていることを思い出した。
ターゲットだけを評価するのではなく、
接触の総量とその中に含まれる価値の分布を捉えるという発想だ。
もしそれがテレビにも適用できるとしたら――
ローカル局にも、まだ別の役割があるのではないか。
そして同時に、
ローカル局としての可能性にも気づく。
それは制作機能だ。
常に全国ネットするような潤沢な予算を持たないため
その機会は多くないが、
ローカル局は自社にクリエイティブ機能を持っている。
そして、そのクリエイティブ機能は
テレビCM枠だけに閉じておく必要はない。
当然、これまでもそのようなトライアルはやってきてはいる。
SNSや動画プラットフォーム、
リテールメディア、地域のデジタルサイネージなど、
地域のさまざまなメディアとつながりながら
ローカル局制作のクリエイティブが展開されていく。
つまりローカル局は、
広告枠の販売者ではなく
地域メディアを束ねるハブ
になれるのではないか。
テレビは
確率分布メディア。
その分布の中で
どのような接触が
どのような行動変化を生むのか。
そしてその変化を
地域の流通や金融のデータと結びつけて測る。
さらにクリエイティブを
テレビとSNS、リテールメディアに横断的に展開する。
もしそれができるなら、
ローカル局は
地域マーケティングの実験場
になれるかもしれない。
森崎はそんな構想を、
テレビ信陽の中期経営計画Ver2.0のメモ欄に
そっと書き込んでみた。
もちろん、まだ仮説にすぎない。
だが、テレビの次の姿を考えるヒントには
なるのかもしれない。
(楳田 良輝)
*この話はフィクションです。出典・引用などを除き、登場する人物・団体・名称等は架空であり、実在のものとは関係ありません。

