It always seems impossible until it’s done.
歴史的価値ある書物「怪しい業界用語」を発見!

歴史的価値ある書物「怪しい業界用語」を発見!

大掃除で発見した、あの資料…

オフィスの大掃除をしていると、いろんなものが出てきます。
買ったまま一度も目を通していない書籍、使えなかった領収書、
お世話になった方やお世話になりたかったあの人の名刺、
部屋の隅に転がっているBB弾、どこでもらったか覚えていない販促グッズ──。

近年は企画書や資料の多くがデジタル化され、紙で持つことはほとんどありませんが、昔のものはときどき出てきます。
ほとんどはざっと確認してシュレッダー、あるいは廃棄処分に回します。

そんな中、目を疑うものが出てきました。
怪しい業界用語』の、きれいなコピー。
そう、わかる方にはわかる・・・懐かしいアレです。
(「怪しい広告業界用語」と呼ぶ方もいますが、「広告」はついていません)。

企画編集:”神田広告エージェンシー”

『怪しい業界用語』は、1990年代前半頃に広告業界を中心に出回った “まさに怪しい” 文章です。
当時から制作者は不明とされ、あくまでも企画編集は「神田広告エージェンシー」となっています。一部では大手広告会社「H報堂」の関係者によるものではないかとの噂もありましたが、現在に至るまで正式な出所はおそらく確認されていません。

30年ぶりに読み返して、思わず笑いました。これを作った方のセンスはスゴい!
ここに出てくるような “業界用語” は、今でも使われているのでしょうか?
それならそれで少々心配になることもありますが…
コレをそのまま廃棄するのはあまりにも惜しく、できませんでした。

大掃除や断捨離では、細かく考えると作業が進まないので、
「すぐに使わないものは捨てる!」を心がけていますが、
この資料だけは、どうしても無理でした。でもまた何十年もしまっておくのも・・・。

当時リアルタイムで読まれた方は、懐かしみながらも「今も変わらないねぇ〜」と思うのか、
それとも「そんな時代もあったよね」と笑うのか。
一方、初めて読む若い世代の方が、どんな風に感じるのかは分かりません。

本ページ(本資料)は、『怪しい業界用語』を “歴史的価値のある書物” として、
研究・記録・参考目的で後世に残すことを目的にデジタル化したものです。
一時的な公開になるかもしれませんが、こちらに掲載します。

なお、『怪しい業界用語』の著作権は原著作者に帰属します。
本資料は、あくまでも研究・記録・参考目的での限定的な共有にとどめてください。

 

株式会社プログラマティカ

 

<怪しい業界用語>

当時の時代背景や業界の空気感を感じるために、まずは画像のまま読まれることをお勧めします。
そのうえで、読みやすさのためにテキストデータ化したものも以下に掲載しておきます。

<テキスト版>

逆に言うと

意味 本来は、相手の発言に対して、自分の意見が正反対の時に用いるのが筋。
でも、まともに正面切って「オメーの言ってることは全然違うぜ」と言うと、角が立つので「潤滑油的」な意味を持つ。
事例 「今回のキャンペーンのタレントは男で行きたいな」
逆に言うと、女でもいいんじゃないかな」

基本的には

意味 本来は、本当に基本的な話をする時に用いるのが筋。
でも、業界では「基本もクソもあるかよ。これが全てだぜ」という強い意志を持って話すときにも使われる。
事例 「どのプランがお勧めなの?」
基本的には、A案で行きたいと思います」

とりあえずラフだけど

意味 本来は、まだ十分検討されていないが、現時点での “粗い試案” に対する言い訳の時に用いるのが筋。
でも、ラフと言いながら「これで行くぜ」という強気で使う場合(この場合は絵コンテ・カンプと進んでもラフ案から全然変わらない事が多い)と、「考える時間がなかったんだから、これしかできねえよ」という捨てぜりふ的に使う場合がある。
事例 【強気篇】
「来週がプレゼンだけど、何かいいのできた?」
とりあえずラフだけど、ここらへんの案で考えているんだ。結構面白いって周りの女の子たちも言ってくれる訳よ」
【捨てぜりふ篇】
「急ぎで悪かったんだけど、どう?」
とりあえずラフだけど、これは本当にラフだからね!こういう仕事ってさあ、やりたくないのよ。やっつけになっちゃうからさあ」

聞いてません

意味 本来は、連絡事項や依頼を本当に ”本当に聞いていない” 時に用いるのが筋。
でも、業界では「自分のド忘れ」を悟られないために、聞き直って使う場合が多い。20%くらいは “本当に聞いていない” 時があるが、そういう時は鬼の首を取ったように「高圧的な態度」にでるケースが多い。
事例 【ド忘れ篇】
「明日のCF企画打ち合わせだけど、だいたい企画は固まった?」
聞いてません、何の話?いつ決まったのよ、そんな話」
【鬼首篇】
「6月10日の朝日の10段の件だけどさ、大丈夫だよね?」
聞いてません、何それ?ちょっと待ってよ。いきなりじゃん、そんな話。いまさら取れる訳ないじゃん〜、以下ウダウダ・・・」

変な話

意味 本来は、本当に “ヘンなハナシ” をする時に用いるのが筋。
でも、変でも何でもないのに意味もなく “接頭語” として使う時が多い。
事例 「CXの番組の空枠状況どう?うちは入れそうかな?」
変な話、今はすごく混んでてさ、結構まいっちゃってる訳」

来週アタマに

意味 本来は、”アタマ” というからには月曜日の事を指すはず。
でも、業界では月曜日になったためしはない。だいたい火曜日から水曜日になるケースが多い。ひどい時は、金曜日ぐらいになる時もある。この用語は主に木曜日頃に「今週はもうやりたくないから、来週に先送りしよう」という心理状態に陥った時に、最もよく使われる。
事例 「新商品のコンセプトワークの打ち合わせ、いつやる?」
来週アタマにしようよ。今週は、イロイロたてこんじゃってさ、時間が全然ないのよ」

基本的にはOK

意味 本来は、ほとんど何の問題もなくOKな時に用いるのが筋。
でも、業界では「全然OKじゃない。むしろ、やばい状況」でも平気で使う時が多いので、全くあてにならない。
事例 「CFのスポンサー試写、どうだった?」
基本的にはOK。でも2〜3ちょっとしたリクエストがあって・・・」
「どんなこと?」
「まぁ、メチャやばいって訳でもないんですけど、同録でとったタレントのコメントが気に入らない、って言いだして・・・まぁ、最悪撮り直しかな、みたいな・・・」

最悪

意味 本来は、本当に “最悪=どうしようもない状況” の時に用いるのが筋。
でも、業界では “最悪=普通の状況” として使うので、状況を把握するのには何の役にもたたない。
また、 “最悪” と言った時点で物事は全てその状態で進んでいくケースが多い。
事例 「このコピーじゃ、ちょっと辛いんじゃないかな。別案ないの?」
最悪これでいこうよ。悪くないよ、これ」

じゃ、そういうことで

意味 本来は、その会議に出席したメンバー全員の合意がなされた時に用いるのが筋。
でも、業界では長時間の会議に嫌気がさして、ケツを切り上げるときに使われるので、「結論として何が決まったのか、誰も分からない」場合が多い。
事例 「まあ、いろいろ意見もでたし、今日はフレームづくりだから、こんなところでいいんじゃない?次は来週の水曜日にでも、もう1回ももうよ」
じゃ、そういうことで。どもお疲れさまでした」

いいか悪いか別にして

意味 本来は、「良い」とか「悪い」とかの次元ではなく、物事の本質に対して、こうあるべき、という正論を述べる時に用いるのが筋。
でも、業界では「自分の意見に全然、自信がない」時に、相手をたまくらかすために使われる。
事例 「じゃあ、メディアプランはテレビ中心、ということで・・・」
いいか悪いか別にして、テレビやめちゃわない?なんかさあ〜、電波媒体っぽっつう雰囲気じゃないんだよね」

よろしくどうぞ

意味 本来は、会話の終わりに「以上の件、よろしくお願いします」という言葉で相手に伝えるのが筋。
でも、業界では「よろしく」「どうぞ」というバカ丁寧な言葉を、意味もなく2度繰り返すケースが多い。一見、非常に丁寧なようで、実は気持ちが全くこもっていないので、惑わされてはいけない。
事例 「じゃあ、来週の金曜日に伺うということで、よろしくどうぞ

◯◯の意見には賛成。ただ、ひとつ違うのは

意味 本来は、賛成しているのだから、もし付け加えるとしても本当に1点だけの時に用いるのが筋。
でも、ほとんどの場合は「ひとつ違う」が大嘘で、実は「全部違う」という、とんでもないコトバ。「賛成なんだな」なんてホッとしてると足元をすくわれて愕然とするので要注意。
事例 「というわけで、ガラスは白、だと思いますが・・・」
僕もその意見には賛成。ただ、ひとつ違うのはガラスは黒だ、って言う点」

白紙の状態

意味 本来は「何も決まっていない」即ち、「これから皆さんの知恵を借りて考えていきたい」という “謙虚” な気持ちを伝える時に用いるのが筋。
でも、業界では、特に得意先が「そんなもん、考えてるわきゃね〜だろ。せっつくんじゃね〜よ、本当に。可愛くね〜な」という “開き直り” の時によく使われる。それを聞いた “営業マン” が、よせばいいのに社内に帰ってきてから「例の件は、白紙の状態だ〜」と胸を張って報告し、スタッフから「なに威張ってんだ、バカ」とひんしゅくを買うケースがよくある。
事例 「秋以降の宣伝計画は決まりましたでしょうか・・・へへへ」
白紙の状態だ。まあ、俺なりの思惑はあるけどな。まだ、言う段階じゃない」

キャッチボール

意味 本来は、野球用語で「ピッチャーとキャッチャーが球を投げ合い、徐々に肩の調整をする」時に用いるのが筋。
でも、業界では「得意先VS代理店」「営業VSスタッフ」間の時間ばかりかかって、意味のない “意見のやり取り” を指す時に使う。そりゃあ、何度かやり取りするうちに、少しは前進するが本来ならば、もっと計画性と具体案をお互いに持っていれば済む話ではある。
事例 「コンセプトが、いまいち弱いな〜。もう少しキチッとなんない?」
「まあ、今日のところはこのぐらいにして、また来週にでもキャッチボールしながら、固めていくということで・・・」

フレームづくり

意味 本来は、“基本骨子” をしっかりと固める時に用いるのが筋。
でも、業界では「なんとなく、皆の思惑を大雑把に出し合う」時に使う。
事前に「今日の目的はフレームづくりだから」と、分かっている場合はあまりなく、ほとんどの場合は “ダラダラと長い会議としてしまい何も決まらなかった” 時に、ディレクターが「言い訳」+「皆を安心させるために」使う。
事例 「今回のコンセプトワーク、結構ややっこしいね。作業、大変じゃん」
「まあ、今日はフレームづくりだからさ。また、皆で持ち寄ってやろうよ」

あとは金の問題だけ

意味 本来は、他の全ての問題がクリアになって、最後に “そんな大きな問題” ではないが、”金” の件だけがクリアになっていない時に用いるのが筋。
でも、業界で “金” 以上に重要な問題がある訳がなく、この言葉は単に、「問題の先送り」にしか過ぎないにも拘わらず、皆は「そうか、あとは金の問題だけか」と誤解してしまう。☆類義語・・・「あとは時間の問題だけ」
事例 「いい企画じゃん。これ。最高に面白いよ。やろうやろう」
「でしょ。是非やりたいんだ。まあ、あとは金の問題だけ、なんだけどね」
「金かあ〜。そうなんだよな、予算的には辛いわな〜」

捕まらない

意味 本来は、どうしても連絡を取りたいのだが八方手を尽くしても、相手に連絡がつかない時に用いるのが筋。
でも、業界では “連絡すら一度も取らなかった” のに「いない相手が悪い」という “開き直り” でよく使われる。
事例 「イラストレーターの人と連絡取れた?つかまえなきゃヤバイよ」
「それがね〜、全然捕まらないんですよ。こっちも、まいっちゃってさあ」

広告っぽくしたくない

意味 本来は、“読んで字の如しに広告ではない” 時に用いるのが筋。
でも、広告業界で “広告じゃないもの” を作ることはあり得ない。にも拘らず、制作者が「ダセーのは、やりたくね~よ」と言う時に意味不明で使う。
☆反対語:「表現っぽくしたい
事例 「今回の商品は、堅いっていうか難しいのは確かだね」
「やるんだったら、広告っぽくしたくないなあ~。表現っぽくしたいなあ~」

て・に・を・は、だけ直す

意味 本来は、本当に “助詞” の「て・に・を・は」だけを直す時に用いるのが筋。
でも、業界では「だけ」と「予算内」で収まった試しはなく、ひどい時には “キャッチコピー” まで直される場合も多いので油断できない言葉である。
事例 「明日が校了なんで、もうここまできたら “て・に・を・は” だけ直す、ということで、宣伝課長にお伝えください」
「見るだけ見ておくけど、課長は言葉にうるさいから、気は持てないぜ」

もちろん、やらないって訳じゃなくて

意味 本来は「ちゃんと、やります」という意思表示の時に用いるのが筋。
でも、業界では “得意先の無理難題” に対して “ささやかな抵抗” として使う場合がほとんど。しかし、最後は “やらないと” 出入り禁止になる。
事例 「来週までに3方向以上の企画を持ってきてよ」
「来週までですか?そりゃあ、めっちゃキツイですよ」
「できないって言うの?」
もちろん、やらないって訳じゃなくて・・・。ただ、いきなりなんで」
「じゃあ、やってよ。でも、手抜きはだめだぜ」
「だから、もちろん、やらないって訳じゃなくて、やるんですけど・・・。やるんですけど、来週っていうのはチョット・・・」
「だめ!来週だ!絶対だからね」

宿題

意味 本来は、小学校で児童に対して “課す事項” を指す時に用いるのが筋。
でも、業界では “得意先から与えられた課題” を軽いノリで表現するときに使うのだが、その内容は決して軽くはない。また、本来の “宿題” ならば、やらなくても、せいぜい廊下に立たされるのが関のヤマだが、この場合の “宿題” は、やらないと “とんでもないこと” になるので注意が必要だ。
事例 「じゃあ、キャッチコピーはやり直しだからね」
「はあ~。んじゃ、宿題ということで、持ち帰りまして、再度検討します」

アウトプットイメージが見えない

意味 本来は、“最終的な方向性・結論が、現時点では不確定” という状況を表す時に用いるのが筋。
でも、業界では「オメーの言ってることが、サッパリ分からない。一体全体、何やりてえんだよ?」という、相手に対する “不信感” を表明する時に使う。
こう言われた方は「何?見えない?見えないんじゃなくて、テメーこそ何も考えてないんじゃねぇかよ。いいかげんにしろよ、タコ」と心の中で言い返すが、決して言葉にはしない。
事例 「今度の消費者調査なんだけど、アウトプットイメージが見えないよね。もっとテーマを絞り込んでから発注して欲しいワケ」
「逆に言うと、どこらへんのイメージがつかめないの?」

腹をくくる

意味 本来は、本当に “不退転の決意で臨む” 時に用いるのが筋。
でも、業界では “単なる気合入れ” として用いられる。特にダメな営業ほどこの言葉を連発するので、スタッフはほとんど聞き流している。
事例 「営業さん、制作のお薦めはA案だからね。得意先にキチッと伝えてよ!」
「俺も営業として、腹をくくるぜ。ビシッと仕切ってくるからよ」

朝イチ・午後イチ

意味 本来は、朝イチ=午前9時30分、午後イチ=13時を指す時に用いるのが筋。
でも、業界では「どこが朝イチ・午後イチ」なのか全く分からない程、個人によって受け止め方がマチマチのため、会議が成り立たない時が多い。
ひどい時は、朝イチ=午前10時過ぎ、午後イチ改め午後2=ただの午後2時を指すので、”イチ” には何の意味もない。
事例 「じゃあ、次の打ち合わせは、明日の午後イチということで・・・」
午後イチね、了解了解」

ここだけの話

意味 本来は、極秘の話を “相手を信頼しているから特別に話す” 時に用いるのが筋。
でも、業界では「ここだけの話=皆が知ってる話」という意味で使うので、こう言われたからといって「あ〜、俺はこいつに信頼されてるんだな〜」等と感違いしてはいけない。だいたい、この手の話は関係者の95%が知っているので、だれも知らないだろうと思って「お前、知ってる?実はさあ〜」なんて得意げに言うと恥をかく。
事例 「例の新番組の件、何か分かった?」
ここだけの話、あの新番組は企画が没らしいぜ。」

補足すると

意味 本来は、相手の言った内容に対して “簡単な補足” をする時に用いるのが筋。
でも、しゃべりたがりが多い業界の人間の間では、“補足” と言いながら実は全部言い直すことがよくあり、会議がやたら長引くので、この一言がでたら、要注意。
事例 「今の説明に対して、何かある?」
補足すると、まずキャンペーンの企画意図はさあ〜(以下ダラダラ)」

仮押さえ

意味 本来は、”確定ではないが、確度が高いもの” に対して用いるのが筋。
でも、業界では “とりあえず感覚” で使うので確度の高さを知る事はできない。特に “媒体スペース” “人のスケジュール” に関してこの言葉がよく使われるが、いつになったら “本当の押さえ” になるのか、発注した本人もわからないため必ず「言った、言わない」「頼んだじゃん、聞いてない」といった不毛のやりとりが、あちこちで見受けられる。
事例 「8月23日売りの “JJ” 4C1P 、仮押さえしといてよ」
「分かった。仮押さえね?仮押さえだったら大丈夫だと思うよ」

とりあえず走りながら考えよう

意味 本来は、陸上選手が走りながら何かを考える時に用いるのが筋。
でも、業界では陸上選手と何も関係なく「何も考えていないが、すぐにやらないと間に合わないので、いきあたりばったりで作業する」時に使う言葉。
最初から誰も何も考えていないので、時間ばかり経過し何もまとまらない事が多い。
事例 「例のイベントの企画だけどさ〜、来週プレゼンなんだよね。どうする?」
とりあえず走りながら考えようよ。基本的には、あとは成り行きで」

5分だけ時間ある?

意味 本来は、本当に5分だけ相手と話をしたい時に用いるのが筋。
でも、業界では「5分で済んだ」試しはなく、たいていの場合延々と捕まってどうでもいいような話を聞かされるハメに陥るので、このセリフがでると本能的に逃げるようになる。
事例 「お〜、いいところで会ったよ。探してたんだ。5分だけ時間ある?

全然時間ない

意味 本来は、寝る時間も含めて全く時間がない時に用いるのが筋。
でも、「暇な奴は仕事のできない奴」という怪しい慣習がある業界では、暇人と思われるのが嫌で、99%の人間が使う言葉。こういう奴に限って、毎晩ディスコに行ったり、女とシケ込んだりしている時間はタップリある。
このセリフを吐く時は必ず “システムダイアリー” をペラペラめくりながら、眉間にシワを寄せて「まいったな〜」と独り言を言う。そのスケジュールをのぞいて、よ〜く見ると「イタメシ屋に予約のTEL入れる」「友美子誕生日」等といった仕事とは全く関係ない事で埋まっているケースが多い。
事例 「次の打ち合わせ、来週やりたいんだけど時間ある?」
全然時間ない。今、メチャ忙しくてさぁ〜参ってるワケよ」

って言うか〜

意味 本来は、相手の意見に対して「そういうことではなく、むしろこうだと思う」という “否定語” として用いるのが筋。
でも、業界では「お互いに傷をなめあう」習慣があるので、モロには否定しないでこういう言い方をする。ひどい奴になると、相手の発言に対して全てこのセリフを吐くので「お前は何様のつもりだ!」と心の中で罵る時がある。
事例 「じゃあ、ラジオはAM局中心で考えるということで・・・」
って言うか〜、FM局みたいなんでもいいんじゃない?」

仁義をきる

意味 本来は、任侠道の世界で、自分の身分を名乗るときに用いるのが筋。
でも、変な所でカッコつける業界では、“単に話を通しておく時” に使うので、知らない人が聞くと「年中、仁義ばかりきってる変な世界」と誤解する。
事例 「1制のコピーライターを一人、この作業に加えようと思うんですけど」
「よっしゃ。局長には俺から仁義をきるからよ、任せとけ」

担当者レベルではOK

意味 本来は、得意先の担当者は完全に了解したという時に用いるのが筋。
でも、業界では “単なる気休め” に過ぎず、結局は何もOKになっていないケースがほとんど。この言葉を信じて作業を進めていると、悲劇の大逆転劇が起きた場合「OKって言ったじゃないかよ!」「いや、あれはあくまで担当者レベルの話だから・・・」という身内の争いが生じる。
事例 「プレゼンの感触は、どう?」
「う〜ん、担当者レベルではOKなんだけど・・・上の方が、ちょっとね」

ターゲットは若い女の子

意味 本来は、当該商品の訴求対象が “若い女の子” である時に用いるのが筋。
でも、業界では “あらゆる商品の約70%” が若い女の子狙いであるため、新鮮味のないコトバになってしまっている。狙われた “若い女の子” もいい迷惑で、「私たち、そんなにお金ないわよ〜」という声が巷にあふれている。
事例 「この商品のターゲットは若い女の子に絞りましょう」
「そうだよね、やっぱ若い女の子だよね」

分かる分かる

意味 本来は、本当に相手の言ったことを理解した時に用いるのが筋。
でも、“知ったかぶり大好き” な業界人は「自分だけ取り残されるのが嫌」で全然分からなくても、この言葉を使う。こう言われたからといって、自分の意見が皆に理解されたと思ったら大きな間違いである。
事例 「まだ文章にできる段階じゃなくて、頭の中にしかないんだけど・・・」
「うんうん、分かる分かる

休み明けでいいから

意味 本来は、月曜日に “来週でいいから” と言う時に用いるのが筋。
でも、業界では “金曜日の夕方” に得意先からTELが入り言われる場合がほとんど。これは、よ〜く考えると “土・日でやれ=休んでんじゃねぇぞ” という事なのである。もっとヒドイのは12月29日に「年明けでいいから」というオーダーがある。これは ”正月が休めない” という事なので、さすがに代理店も「そこを何とか、1月半ばぐらいまで延ばしてもらえませんでしょうか?・・・」と粘るが、延びてもせいぜい2〜3日なので1月10日位で手折するケースが多い。
事例 「グラフィック案はラフでいいから、急いで出してよ」
「今日が金曜ですから、来週の後半でいいっすよね?」
「ダメ!休み明けでいいから。本当にラフで構わないから」

確認します

意味 本来は、その場で初めて言われた事に対して用いるのが筋。
でも、業界では百万人回言われた事でも、全然確認していない場合が多いので、ほとんど毎日のように、このコトバがあちこちで聴かれる。
事例 「先週、頼んでいたタレントの契約料の件だけど、調べてくれた?」
「アッ・・・。帰りまして早急に確認します

ほとんで気にならない

意味 本来は、非常に些細な事なので、“99%気にならない” 時に用いるのが筋。
でも、業界では “単なる傷のなめあい” に過ぎず、本当はメチャ気になっているのだが、それを言い出すと“大変な事態” になるのでよく使う。この言葉を言う人が多ければ多いほど、事態は深刻である。
事例 「写真のあがりが、ちょっと甘くてさあ〜。どう?気になる?」
「ぜ〜んぜ〜ん。ちょっとあれだけど、ほとんど気にならないよ。お前は?」
「僕も、最初はちょっとだけ引っ掛かったけど、ほとんど気になりません」

 

<熱血業界談義>

この物語を、日頃現場で働いている方々に捧げます。もちろんH報堂では、このようなことは、いまだかつて一度もありません。全てフィクションです。

企画編集:神田広告エージェンシー

オリエン篇

来月末日、電機業界第7位のカスリ電器産業の会議室にて、新商品のオリエンが行われた。
担当代理店は業界5位の博大エージェンシー。カスリのメイン代理店である。

[得] 「え〜、では早速始めます。今回の新製品 “ウルトラテレビ” の特徴は画像がきれいな事です。画面も明るくなった、大きくなった等、当社の技術を結集した力作です。ぜひとも良い企画をお願いしたい」
[広] (オイオイ、何の特徴もねえじゃねぇかよ。こりゃ、売れないぜ・・・)
「ははあ〜、本日はオリエンを受けさせていただきまして誠にありがとうございました。早速、持ち帰りまして弊社の総力を結集し、売れる企画をご提出させていただきます」
[得] (なんにが売れる企画だよ。このバカ。売れなきゃ困るんだよ、こっちは。変な企画持ってくんなよ)
「皆さんのアイデアに期待しています。企画提出は2週間後ということで」
[広] (オイオイ、全然時間がないじゃねぇかよ。どうなってんだよ、ったく)
「結構、急ぎの作業になるかと思いますが、大至急検討致します」
[得] (どうせ1カ月やったって、作業すんのはプレゼンの直前のくせによ)
「まあ、あまり余裕のあるスケジュールではないかも知れませんが、その辺も含めて競合ではなく、指定にした訳です」
[広] (あったりめえだぜ、これで競合だったら怒るでえ、ほんまに)
「ありがとうございます。弊社に対するご期待をヒシヒシと感じております。必ずや素晴らしい企画をお持ちします」
[得] (期待なんかしてねえよ。そのかわりこのプレゼンをヘタ打ったら出入り禁止だ)
「博大さんは、当社のメイン代理店ですからね。安心してお任せしますよ。それから、キャンペーン予算は媒体費がTV・ラジオ・新聞・雑誌合わせて4億。制作費は全部で5千万円です。メディアプランも良いものをお願いしますよ」
[広] (え〜、マスがたったの4億かよ。何にもできねえぜ、今時そんなもんじゃ)
「ご予算を承って、御社のこのキャンペーンに賭ける意気込みを痛感しました。では、2週間後ということで・・・」

第1回 社内打ち合わせ篇

オリエンから帰ってきて第1回目の社内打ち合わせが博大エージェンシーの会議室で行われた。
メンバーは営業・制作・マーケ・媒体だが、会議開始予定時間になってもみんな集まらない。
やっと揃ったのは1時間遅れだった。

[営] (ったくよ〜、時間守れよな〜。忙しいふりしやがってよ)
「え〜、皆さんお忙しい中集まっていただきまして、ドモ。それでは今回のキャンペーンについて説明を・・・」
[制] (また仕切りの悪いオリエンなんだろ〜、このタコ営業め)
「ちょっとさ〜、どうでもいいけどこの前の “カキカキワープロ” のプレゼン結果どうなってんだよ。
人に急ぎで作業させといて返事はないの?」
[営] (なに〜?馬鹿はテメーだよ。その件はグループ長にとっくの昔に報告したぜ)
「その件は鈴木グループ長に話したんだけど、聞いてないの?」
[制] (聞いてないから、教えろってんだよ)
「聞いてない。聞いてないし、だいたい何で俺に言わないのよ」
[営] (いつもお前は席にいねえじゃないか、冗談じゃねえぞ)
「悪い悪い。担当者レベルでは基本的にはOKなんだけど、部長が引っ掛かっているらしいのよ。
結論はもうちょっと待っててよ」
[制] (な〜にが、担当者レベルではOKだよ。ネジ巻くのが営業の仕事だろうが)
「急がしといて、これだもの。たまんないね。大体さ、カスリの仕事っていつもこうなんだよな。うちの若いのは、ヤル気無くしてるぜ」
[営] (ヤル気がねえのは、お前だけだろが。これ以上、与太を飛ばすなよ)
「分かったよ、ゴメンゴメン。そんじゃあさ、時間も押してるんで今回のプレゼンの打ち合わせをしようよ。まず、マーケの粟っちゃん。テレビ市場はどうなの?カスリのシェアも含めてさあ〜」
[マ] (この能無し営業が。そんな基本的なことをイチイチ聞くなよな)
「前にも話したかもしれないけど、カスリは弱いね。ハッキリ言って。さらに言わせてもらうと、
今回の商品にUSPがない訳じゃん。何で今頃こんな商品を出すことになったの?カスリはユーザーニーズの把握が相変わらず弱いね」
[営] (文句ばっか言ってんじゃねえよ。会議が前に進まないじゃねえかよ)
「そこら辺の情報は集めとくよ。じゃあ次はあさっての午後1で、よろしく」

第2回 社内打ち合わせ篇

前回の打ち合わせで何も前に進まなかったまま、第2回の打ち合わせに突入したが・・・
例によって開始予定時間30分過ぎても全員集合ならず。シビレを切らした営業が見切り発車でスタート。

[営] (午後1って言ったのによ〜、定刻に来てから文句言えよな)
「制作の板ちゃんが、チョイ遅れらしいんで。あと媒体の遠ちゃんは出張で、勝っちゃんは今、席を出たらしいんですが、まずは始めましょう」
[マ] (相変わらず仕切りが悪い営業だぜ。こっちだってクソ忙しいのによ〜)
「マーケの中で何回かキャッチボールしてみたんだけど、今回の商品のコンセプトは基本的には “楽しいテレビ” っていうのでどうかな〜?いろんな女の子にも聞いてみたんだけど、テレビって今、楽しくないらしいんだよね」
[営] (オイオイ、女の子ってミニクラブのねえちゃんじゃねえのかよ)
「うん、分かる分かる。キ—コンセプトとしては有り得るかもしんないね」
[マ] (何がキ—コンセプトだよ、この馬鹿。これでいくんだよ、これで)
「ターゲットは若い女の子。明るくなったとか大きくなったとかは、他社では当たり前だし、誰も驚かないから、言ってもしょうがないよね」
[営] (言ってもしょうがないじゃなくて、言わなきゃしょうがねえんだよ)
「俺も粟っちゃんの意見には賛成。ただひとつ言えるのは、得意先の意向も無視できないって事ぐらいかな」
[マ] (なんだよ、俺の言うことに反対してんじゃねえかよ。上等だぜ)
「いいか悪いか別にして、逆に言うとアウトプットイメージの方向性になるのかもしんないけど、今日はフレーム作りなんでしょ?」
[営] (そんな悠長な事も言ってらんねぇんだよ。プレゼンは来週だぜ)
「まあ、皆が同じ土俵に乗ればいいんだけどね。あせってもしょうがないし」

ここで、制作の板西Dが登場。

[制] (俺がいないと話も進んでいねえだろう〜。ヘヘン)
「いやあ〜、大日本航空のプレが押しちゃってさあ。でもバッチシよ。感触良好。やっぱ、いいねえ大企業はさあ。ロケはカリブ海だぜ」
[営] (くだらねえ自慢話は家でやれよ。何にもコピー考えてねえんだろう)
「ああ〜、もう時間だよ。次は明日の夜やろう。7時から。よろしくね」

第3回 社内打ち合わせ篇

そろそろ表現を決めないと間に合わない。会議開始は30分遅れでスタートした。

[営] (尻に火がついてんだよ。早く案を固めようぜ)
「この前、粟っちゃんの方からコンセプトは “楽しいテレビ” っていう案がでたけど、
どう、皆どうかな?」
[制] (どうかな、じゃなくてキチッと仕切れよ、馬鹿営業)
「表現的には、もうイロイロ考えてんだけど “楽しいテレビ” は悪くないんじゃないかな。タレントは決めたぜ。若い奴に人気がある奴がいいよな?俺の知り合いに極東プロの副社長がいてさあ、そいつが言うには今年のイチオシなんだってさ。名前は吉田万作。知ってんだろ?関東テレビの “神田ラブ物語” に出てる奴」
[マ] (あいつかよ〜。全然楽しそうじゃねえな。コンセプトに合わないぜ)
「若い女の子に人気があるし、悪くはないよね。ただ、楽しさ感をどう表現するかだけの問題だよね」
[営] (それが一番の問題じゃねえかよ。だから悩んでんだよ)
「粟っちゃんの意見に賛成だね。あいつじゃ、ちょっと暗いんじゃないかな?」
[制] (シロウトが分かったような口をきくんじゃねえ。お前らに何が分かるんだよ)
「そんなことないさ。いい味出してるよ。最近の彼。あと、キャッチは1案だけにしたい。何案も出すとカスリは混乱するぜ」
[営] (混乱しねえよ。1案じゃプレゼンにならねえだろうが、ったくよ〜)
「とりあえず、どんなの考えてるのか出してみてよ」
[制] (とりあえずじゃねぇだろうが。これで行くんだよ、これで)
「広告っぽくしたくないから柔らかい表現っぽいやつで行こうよ。吉田万作に合ったコピーだぜ、これは。まあ、これで決まりだろうけどな、どう考えても・・・キャッチコピーは “なに見てんの、お嫁さん” これや。いいだろ?」
[営] (もうコイツとは仕事すんのやめよう。明日、局長に相談だな)
「なんとなく今っぽいね。雰囲気としてはさあ〜。ビジュアルはどんなの?」
[制] (絵心もねえ奴が何がビジュアルだよ。やりたい絵で行くぜ)
「アートっぽくしようかなって思ってる。ラフは、いま作ってる」
[営] (変なの出すなよ、変なの。こりゃ、ヤバイな)
「よし、じゃあ来週アタマに表現のツメをしようぜ」

第4回 社内打ち合わせ篇

今日が絵コンテ発注のギリギリの日。表現もヤバそうだが媒体プランはどうなってるのか
誰も気づいていないようだ・・・

[営] (どうでもいいけど今日で決めねえとアウトだぜ。今日は完徹や)
「板ちゃん、ビジュアル見せてよ」
[制] (見せてお前に分かるのかよ。中学の時は美術2だろ?)
「とりあえずラフだけど。吉田万作がさあ〜、スペインの海岸で泳いでんだよ。スペインはいいぞ、これからはスペインだぜ。それでさあ〜、海から上がってきた万作が焼きイカ食いながらビール飲んでんだよ、男っぽくさ。ナレーションで、“男、万作22歳。ナウイヤングの代表です” て入る訳。そんでもって、万作が遠くを見つめて、ここで夕日がアップ。波の音に合わせてキャッチコピーが、はまる。“なに見てんの、お嫁さん”。音楽は意外性があるズレが面白いからさあ、演歌だろうな、演歌。どう?いけるだろう?」
[営] (てめえは商品を台なしにする気か?何、偉そうに延々と)
「う〜ん、なんとなく見えてきたよね?ところで板ちゃん、万作のスケジュールは大丈夫なの?来月アタマに撮影だけど」
[制] (ウッ、しまった。プロダクションに聞いてねえや。でも、ここで弱みを見せたらなめられちまうからなあ〜。よし、聞き直ろう)
「エッ!何それ?聞いてないぜ、来月アタマの撮影なんてよ。いつ決まったんだよ、そんな話。フザケンなよ。今からスケジュールが取れる訳ねえだろが」
[営] (この大馬鹿野郎!一番最初に言ったじゃねえかよ。お前はそこに居て聞いてたじゃねえか。それを、いまさら何言うてんや!)
「ちょっとマズイな、それは。大至急さあ確認してくんない?」
[制] (人に物を頼むのに、その言い方はねえだろう。この馬鹿が)
「分かってるよ。でもマネージャーが全然捕まらないんだよな、これがまた」
[営] (捕まらないんじゃなくて、連絡もしてねえんだろうが。ウソつくなよ)
「頼むよ、板ちゃん。表現も決まったことだしさあ〜」
[制] (どうせ撮影なんか延期すりゃいいんだろう。ガタガタ抜かすなよ)
「オウ。まあ、後は時間の問題だけだしな。そんじゃあ絵コンテ発注するからな。オイ、たまには飲みに連れてけよ。前祝いによ」

プレゼン当日篇

いよいよプレゼンの日が来た。何も根回しをしていないままプレゼンに臨む博大エージェンシーに未来はあるのだろうか?

[営] 「連日、徹夜を繰り返し練りに練った企画です。よろしくお願いします。では考え方をマーケの粟山の方から・・・」
[マ] 「テレビ市場で後発の御社の戦略を考えてみました。結論から言うと、目立たなくてはいけない、そしてインパクトのある広告にすべきだ、ということです。今回の新商品のポジショニングをマッピングしてみると、若い女の子を狙った商品にすべきかなと思います。コンセプトは “楽しいテレビ” 。に以上です」
[営] 「それでは表現の説明に入らせていただきます。詳しいことは板西から・・・」
[制] 「基本的には1案で行きたいと思います。ズバリ、キャッチは “なに見てんの、お嬢さん”、そしてタレントは、あの吉田万作です。ロケは今話題集中のスペイン。構成は・・・」
[得] 「ちょっと待った。そんな企画で予算はどうなの?5千万円だよ5千万円」
[制] (ヤベ〜、予算の事は頭からすっかり抜けてたぜ)
[営] (しまった。5千万しかねぇの忘れてた・・・)
「まぁ、なんと申しましょうか、そのですね、え〜予算的な問題に関しましては、後でちょっとご相談をしたく思ってまして・・・」
[得] 「博大さんが自腹切ってくれるならウチは構わないけどね。いいじゃない、長い目で考えてよ。メイン代理店なんだからさあ。ところで、媒体プランは?」
[営] (ウッ、しまった。何もやってねえや。どうすんべ・・・)
「それがですね、うちの媒体の勝田と田外。ご存じですよね?この2人がですね、勝田は田舎のおやじさんが急病になりまして、田外は急性盲腸炎で家で休養中なもんですから・・・。もちろん、ご提出しないって訳じゃなくて、早急にツメますが・・・」
[得] (ミエミエの嘘をつきやがって、このタコが。一発脅したろ〜)
「博大さん、最近ちょっとタルンでるんじゃない?ウチはお宅じゃなくてもいいんだから。ウチをやりたいっていう代理店は、他にもたくさんあるんだからね!」
[営] (嘘つけよ。ある訳ねぇだろが、そんな代理店が)
「申し訳ございません。不徳の致すところです。では来週にもう一度・・・」

後日談篇

誰が悪いのかは別にして、その後の博大エージェンシーは、大荒れに荒れた。そしてついに “本音の話し合い” がなされた。

[営] 「出入り禁止になりそうだぜ。この前のプレゼンが大不評でさあ〜」
[制] 「表現の問題じゃねえよな。仕切りが悪かったんだよ、仕切りが」
[営] 「仕切りの問題じゃないよ。表現もさあ・・・」
[制] 「お前、何が言いてぇんだよ、何が。大体あそこはよ〜、クリエイティブが分からねえんだよ。それに比べて大日本航空はいいぜ。この前もさあ〜・・・」
[営] 「板ちゃん、ちょっと待ってよ。だいたい、あんなくだらない案をよく平気で出せるよね。大日本何だか知らないけどさ、制作者としてのプライドはないのかよ?いつもいつも、文句ばっかり言いやがってよ〜」
[制] 「何?お前、俺に喧嘩売ってんのか?ナメルなよ。俺は第1クリエイティブ局の板西だよ。俺で持ってんだよ1クリは。よ〜し分かった。やめだ、やめやめ。もう、カスリの仕事はしねえぞ。蟹枝、いいんだな?」
[営] 「上等じゃねぇか。京王大学体育会自動車部をなめんなよ!」
[マ] 「おいおい、マーケの評価はどうだったんだよ、マーケの方は」
[営] 「なに〜、”楽しいテレビ” なんちゅうどうしょうもないコンセプトにしやがってよ〜。調査はしたのかよ??グルインは?」
[マ] 「やめてよ〜、そんな話は聞いてないし、あんなスケジュールでやれる訳ないじゃない。俺たちは営業の便利屋じゃねぇぞ!」
[媒] 「俺も言いたい。媒体プランの話、何あれ?1日で考えろっていうの?仮押さえもできないじゃん。媒体社に対してメンツ丸つぶれだぜ」
[営] 「メンツだと〜?そんなもん犬に食わせちまえよ、犬に」

その時、カスリ電器産業の広告部・島崎課長からTEL。

[得] 「蟹枝ちゃん、もう1回チャンスやるよ。今度は競合にするけどね。どう?」
[営] 「はは〜、ありがとうございます。今も皆で反省会してたんですよ。本当にありがたいお言葉で・・・。それで、どこと競合なんでしょうか?」

こうして、あわやカスリチーム崩壊寸前に神の手(?)が差し伸べられた。
そしてまた不毛の再プレ作祭が始まったのである。

<了>